区分所有法2条(定義)
【解説】
1.区分所有権(第1項)
区分所有権というのは、「前条に規定する建物の部分」を目的とする所有権ということですから、①構造上の独立性と②利用上の独立性を備えた専有部分を目的とする所有権という意味です。内容的には、第1条を参照して下さい。
なお、「第4条第2項の規定により共用部分とされたものを除く。」とされているのは、専有部分とすることができるものでも、規約共用部分(第4条第2項)となれば、それは専有部分ではないからです。この点の詳細は、第4条2項参照。
2.区分所有者(第2項)
区分所有者は、区分所有権を有する者のことです。
したがって、
専有部分 ←その所有権(区分所有権) ←その所有者(区分所有者)
ということになります。
普通に言えば、分譲マンションなどの住民のことです。
この区分所有者というのは、専有部分を賃借している占有者とは区別されますので注意して下さい。つまり、マンションに住んでいる人でも、賃借人(占有者)は区分所有者ではありません。
3.専有部分(第3項)
区分所有建物は専有部分と共用部分から成り立っています。
専有部分というのは、「区分所有権の目的たる建物の部分」となっていますが、要するに各部屋のことですね。101号室とか201号室とかいう、住民が各自所有している部分のことです。
この専有部分というのは、問題は非常に少ないです。各自の所有なわけですから、他人に迷惑をかけない限り、各自が自由に使えばいいわけです。
そして、専有部分と認められるためには、構造上の独立性と利用上の独立性が必要だという点は、1条参照。
4.共用部分(第4項)
本条項は、「共用部分」の定義ですが、それによると下記の3つのものが共用部分とされています。
① 専有部分以外の建物の部分
② 専有部分に属しない建物の附属物
③ 第4条第2項の規定により共用部分とされた附属の建物
① 専有部分以外の建物の部分
「専有部分以外の建物の部分」というのがあることから分かりますように、区分所有建物で、専有部分でも共用部分でもない建物の部分というのは存在しません。別の言い方をすれば、専有部分でない建物の部分はすべて共用部分になります。
② 専有部分に属しない建物の附属物
「建物の附属物」というのは、ガス・水道の配管や電気の配線のようなものですが、このような建物の附属物は、専有部分の場合も共用部分の場合もあります。たとえば、給水の配管のような場合、基本的には、廊下などの共用部分を通っている本管部分は、共用部分となりますが、本管から分岐し専有部分内に入っているものは専有部分となります。本条項では、「専有部分に属しない建物の附属物」は共用部分だ、と定義しているわけです。
③ 第4条第2項の規定により共用部分とされた附属の建物
これは、規約により「共用部分」とされている以上、当然に共用部分になります。
ところで、区分所有建物というのは、専有部分の所有者が複数いるので、共用部分の管理などで問題が生じるわけですが、分譲マンションの新築時は、マンションの分譲業者がマンションを建築し、最初は一旦分譲業者が一棟丸ごと所有しています。このように一人が専有部分の全部を所有している段階で、そもそも「共用部分」というが存在するのか?という問題があります。
このように一棟の建物における複数の専有部分の全部を最初に一人が所有する場合でも、各専有部分を区分所有権の目的とすることができ、したがって、この場合でも共用部分も存在すると考えられます。というのは、区分所有建物の登記というのは、一般の建物とは異なる特別なものです。したがって、最初から区分所有建物として登記しておかないと、最初は所有者が一人なので、一戸建てのような普通の建物の登記をした上で、分譲が始まり複数の区分所有者が生じた段階で、この登記を区分所有建物用の登記に変更するというのでは、手間と費用がかかります。そこで、最初から区分所有建物として登記しておく必要があるので、最初から区分所有権も生じており、共用部分も生じているのだ、と考えられます。
ただ、最初に区分所有者が一人の段階では、管理組合は成立していません。管理組合というのは、区分所有者の「団体」ですから、所有者が一人の段階で成立しているとはいえないわけです。したがって、分譲によって専有部分の一つが売却されて所有者が2人以上になったときに、管理組合が成立したということになります。
他方、一度複数の区分所有者が存在し、管理組合が成立した後、誰か一人が全部の区分所有権を取得して、区分所有者が一人になったとしても管理組合は消滅しません。というのは、この一人の区分所有者が、専有部分の一つでも売却すれば、再び複数の区分所有者が生じる可能性があるからです。これは、管理組合「法人」についての規定ですが、区分所有者が一人になったことというのは管理組合法人の解散事由に挙げられていないことからも分かるでしょう(法55条)。
5.建物の敷地(第5項)
本条項は、「建物の敷地」に関する定義の規定で、「建物の敷地」は法定敷地と規約敷地があるということを定めています。
法定敷地というのは、「建物が所在する土地」です。不動産登記上の「筆」の概念を前提に、建物が乗っているというのか、建物が引っかかっている土地を法定敷地といいます。この法定敷地については、区分所有者等の意思とは無関係に、法律上当然に建物の敷地となります。
これに対して、規約敷地というのは第5条参照。
6.敷地利用権(第6項)
マンションは建物だけでできているわけではありません。民法で説明してきたとおり、建物は空中に浮いているわけではありませんので、土地というものが必要です。
このマンションが建っている土地を「敷地」といいます。そして、マンションはこの敷地の利用権の上に建っています。
これを敷地利用権といいます。正確に言うと、「専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利」ということになります。
この敷地利用権の一番普通の形は、所有権です。マンションの住民は、敷地の上の建物を区分所有しているわけですから、この敷地利用権である所有権を共有する形になります。
ただ、敷地利用権が、賃借権や地上権、使用借権等の借地権の場合もあり、いわゆる借地権付きマンションと言われるものです。この場合はこれらの権利を区分所有者が準共有する形になります。