区分所有法とマンションの構成部分
【解説】
この「建物の区分所有等に関する法律」は、略して「区分所有法」と言われたり、俗に「マンション法」などと言われたりします。
この「マンション法」という表現は、誤解される可能性があるので最初に説明しておきますが、この法律は賃貸マンションには適用がないということです。賃貸マンションというのは、その建物全体の所有者は一人で、ただ各部屋を多くの人に貸しているだけです。「区分所有」法というくらいですから、この法律は建物を区分して、つまり、各部屋をいろいろな人が所有している場合、つまり典型的には分譲マンションが対象になります。
ということで、基本的に普通の分譲マンションを念頭において説明を読んでいただければいいと思いますが、そもそも、なぜ民法とは別に区分所有法のような法律が必要なのかということです。マンションは、専有部分(101号室というような各部屋のこと)は各自の所有物ですから比較的問題は少ないんですが、エレベーターのような共用部分というのがあります。このような共用部分は、全員の「共有」ということで、一応民法にも「共有」に関する規定はあります。しかし、民法の規定は、あまり多くの共有者の存在を前提にはしていません。しかし、大きなマンションでは100世帯以上の人が住んでいます。つまり、このようなマンションでは共用部分は100人の共有になります。民法をこのような大規模なマンションに適用するのは不都合です。たとえば、共用部分に「変更」が必要な場合、民法では共有者「全員」の同意が必要です。しかし、大規模なマンションで、一人の反対もなく全員の賛成を得るというのは、事実不可能です。したがって、多くの共有者がいるマンションのために特別の法律が必要とされるわけです。
次に、先ほど区分所有法は、基本的に「分譲マンション」を念頭におけばいいと書きましたが、分譲マンションというと、「居住用」を思い出してしまいますが、区分所有法では必ずしも居住用に限定されません。住居、店舗、事務所、倉庫のようなものも認められています。したがって、オフィスビルのマンションもあり得ますし、数が少ないとはいえ、現実にオフィスビルを区分所有している例もあります。
さて、これから区分所有法を具体的に勉強していくわけですが、そのためにマンションは、どういう部分から成り立っているのかを説明します。最初、それが分かっていると、これから勉強する個々の内容が理解しやすいからです。図を見ながら読んで下さい。
まず、大きく建物全体(区分所有建物)と敷地に分かれます。これは分かりやすいでしょう。そして、敷地内には区分所有建物とは別に「附属の建物」あるいは「附属施設」というのがある場合もあります。この「附属の建物」と「附属施設」というのは、区別が分かりにくいですが、「附属施設」というのは、集会棟のような「附属の建物」と、駐車場施設のような建物ではない「附属施設」の両方を含んで使われることもありますが、附属施設の中でも特に「附属の建物」だけについて特に区分所有法に規定がある場合がありますので、大きく附属施設(広義)の中に、附属施設(狭義)と附属の建物があると考えればいいでしょう。
区分所有建物(建物全体)自体は、区分所有法では「建物の部分」という表現が用いられています。この建物の部分は、専有部分と共用部分に分かれます。この専有部分・共用部分という表現は区分所有建物本体に使われる言葉で、敷地は全員の共有ですが、敷地自体は「建物の部分」ではないので、共用部分ではありません。敷地は、敷地としか表現しようがありません。
次に、区分所有建物自体は、「建物の部分」だけでできているかというとそうではありません。「建物の附属物」というものも存在します。これはちょっと分かりにくいかもしれませんが、水道・電気などの配管・配線などだと言えば、分かってもらえるでしょう。