国土利用計画法23条(事後届出)

【解説】

1.土地売買等の契約~総論

事後届出が必要な取引は「土地売買等の契約」です。届出が必要な契約は売買契約が典型例となりますが、「契約」というのは非常に多くの種類があって、どの契約に届出が必要で、どの契約には届出は不要なのか?というのが問題になります。

この「土地売買等の契約」というのは、第14条の規制区域内の許可制に関する条文に定義規定がありますが、前にも書きましたように、規制区域というのは指定されたことがありませんので、最もよく利用される事後届出制のところで解説することにします。

この届出が必要な「土地売買等の契約」の定義は「土地に関する所有権若しくは地上権その他の政令で定める使用及び収益を目的とする権利又はこれらの権利の取得を目的とする権利の移転又は設定(対価を得て行われる移転又は設定に限る。)をする契約(予約を含む。)」ということになります。

この部分には、以下の3つの要素があります。

①「土地に関する所有権、地上権、賃借権又はこれらの権利の取得を目的とする権利の移転又は設定」
②「対価を得て行われる移転又は設定に限る。」
③「契約」

最初にこれについて気を付けて欲しいのは、これらの要素は3つとも満たすときだけ届出が必要で、1つでも欠ければ届出は不要になるという点です。それでは、これらのそれぞれについて一つずつ見ていきましょう。

2.土地売買等の契約-所有権・使用収益権

土地売買等の契約に該当するかどうかの最初の要素は、「土地に関する所有権若しくは地上権その他の政令で定める使用及び収益を目的とする権利又はこれらの権利の取得を目的とする権利」です。

この届出が必要な「土地に関する権利」は、「所有権」の移転だけではなく、「地上権」や賃借権等の「使用及び収益を目的とする権利」の設定や移転も含まれます。

① 売買契約

まず、所有権の移転という点ですが、典型的には売買契約などがそれにあたります。売買契約によって土地の所有権が移転するわけです。

② 譲渡担保、代物弁済契約

譲渡担保や代物弁済契約も土地の所有権が移転するのでこの要件を満たします。譲渡担保というのが分かりにくいと思いますが、これは担保の一種です。

上図を見て下さい。AがBにお金を貸すとします。Bは土地を所有しています。この場合は、普通はBの土地に抵当権を設定するというのが一番普通かと思います。

しかし、担保というのは実にいろいろ種類があって、この場合にBの土地の所有権をAに譲渡する形を取る担保というのがあります。これを譲渡担保といいます。これは土地の所有権がBからAに移転しているので、先ほどの「所有権の移転」という要件を満たしているわけです。もちろん、この譲渡担保は担保の目的ですから、BがAにお金を返すと、一旦Aのところに移転した所有権がBに戻るようになっています。

③ 抵当権

同じ担保でも、抵当権はこの要件を満たしません。抵当権は所有権を移転しないので、届出は不要です。

さらに、この抵当権が実行されて不動産が競売された場合、この競売についても届出は不要です。

競売というのは、裁判所が間に入って売買契約が結ばれることになるので、所有権の移転となりますが、これは特別に適用除外となっています。つまり、土地売買等の契約には該当するが、届出は不要となります。

これは裁判所が関与しているので、不当な売買契約になることはないので適用除外と考えてもらえばいいかと思います。

3.土地売買等の契約~対価

次は、届出が必要なのは、「設定又は移転に対価」を得るような契約だけ届出が必要となります。したがって、対価を得ないような契約は届出は不要です。典型的には贈与契約です。

遺産分割、相続、時効取得なども対価を得ていないので届出は不要です。

① 信託契約

信託契約というのは意外によく出題されます。上図を見て下さい。

信託契約というのは、土地の所有者(委託者といいます)が、信託会社(受託者といいます)に対して、土地の管理や運用などを委託する契約です。この信託契約は、受託者に管理・運用してもらうために、土地の所有権を移転するという手法を取ります。

しかし、これは管理・運用のために所有権を移転しているのであって、受託者から委託者に対して対価(土地の代金)を支払うわけではありません。

したがって、信託契約そのものについては対価の授受はなく、届出は不要です。

ただ、受託者が信託契約に基づいてその土地を売却するときには、届出は必要です。これは、信託契約に基づいていますが、普通の売買契約ですので、届出が必要なわけです。

② 債務引受

この「対価」というのは、何もお金を払うことだけには限りません。相手方に対して何らかの経済的利益を与えれば、それは「対価」の授受があるということになります。

したがって、債務引き受けなども「対価」の授受があることになります。

上図を見て下さい。AがBに対して土地を売却したとします。このような場合、BはAに対して普通は代金を支払います。これは問題なく対価です。

しかし、AがCに対して何らかの債務を負っている場合、Bがこの債務を引き受けてくれれば(債務引き受け)、AはCに対して債務を支払う必要がなくなるという意味において、Aは経済的な利益を受けています。

したがって、これは「対価」だということです。

③ 地上権・賃借権の設定

地上権・賃借権の設定は、使用収益権の設定になりますので届出が必要になる場合がありますが、その地上権や賃借権の設定については、権利金の授受がある場合は、届出は必要となりますが、権利金の授受がない場合は届出は不要になります。

土地売買等の契約における「対価」というのは、「設定・移転」に対する対価です。

そして、権利金というのは、地上権や賃借権の「設定」の対価になります。権利金というのは、貸主に渡したまま戻ってきません。したがって、これは賃借権の「設定」の対価になります。

これに対して、賃料は毎月支払いますが、これは毎月土地を利用させてもらっていることの対価、つまり「使用」の対価になります。そして、届出が必要な対価は、この設定の対価になります。

4.土地売買等の契約~契約

最後に「契約」についてですが、これは両当事者の合意が必要だということです。

したがって、一方的な意思表示で効果が生じるような行為(単独行為といいます)は、届出は不要です。具体例としては、解除権の行使、買戻権の行使等です。

① 予約契約

上図を見て下さい。AからBへ売買の予約契約がなされたという図です。

まず、売買の予約契約ですが、これは一方的な意思表示ではできないので、届出が必要です。

さらに、予約完結権の譲渡というのも一方的な意思表示で譲渡することはできず届出が必要です。

この予約完結権の意味ですが、予約契約というのは、予約だけでは意味がないので、いずれ売買の本契約に進むことになりますが、この予約を本契約にすすめるには、予約完結権を行使するという形で行います。この予約完結権は、当事者のどちらがもってもいいので、買主(B)の方が持つこともできます。

そして、この予約完結権というのは、財産的な価値がありますので、譲渡できます。われわれは民法で債権譲渡というのを勉強しましたよね。あれと同じようなものです。

そして、これは予約完結権の譲渡「契約」であり、届出が必要となります。つまり、予約契約のときと予約完結権の譲渡のときの両方とも届出が必要です。これは「所有権移転請求権の譲渡」「買戻権の譲渡」というのも同じ考え方で、届出が必要となります。

ただ、予約完結権の行使自体は、単独行為になり、届出は不要です。というのは、予約契約によって、買主(B)が予約完結権を持つということは、AB合意のもとに本契約に進む権利がBに与えられた、ということです。すでにこのような予約完結権が買主に与えられているということは、売主も了解済みなわけですから、あらためて売主の合意を得る必要はなく、買主は一方的にその権利を行使すればいいわけです。

② 交換契約

次は、交換契約というのを説明します。この交換契約については、両方の当事者が届け出る必要があるというのを押さえて下さい。

土地を交換するわけですが、どちらの当事者も土地の所有権を取得するからです。

さらに、注意して欲しいのは、届出対象面積との関係です。事後届出は、一定規模以上の大規模な土地取引についてだけ行えばいいので、交換する土地の一方がこの届出対象面積に達していない場合は、その届出対象面積未満の土地については届け出る必要はありません。

交換契約自体は、両当事者に届出が必要になる可能性がありますが、これは当然所有権を取得する土地が届出対象面積に達していることが前提だからです。

③ 共有持分権の譲渡

次に、共有持分権の譲渡というのも気を付けて下さい。これは単純に土地の面積を共有持分で割って下さい。

市街化区域内の3,000㎡の土地をAとBが共有しています。Aの持分は2/3、Bの持分は1/3だったとします。共有者は自己の「持分」を単独で譲渡できるというのは、民法の共有のところで勉強しました。

Aは3,000㎡×2/3=2,000㎡、Bは3,000㎡×1/3=1,000㎡となります。ここも先ほどと同様、届出対象面積というのが関係してきますが、市街化区域内の土地は2,000㎡以上の土地が届出対象面積です。したがって、Aがその持分を譲渡するときには、持分の譲受人は届出が必要ですが、Bがその持分を譲渡したときは、その持分の譲受人は届出が不要です。

④ 停止条件付きや解除条件付きの契約

次に、停止条件付きや解除条件付きの契約も「契約」である以上、届出が必要です。ただし、停止条件が成就した場合には、すでに停止条件付き契約の際に一度届出をしていますので、新たに届出は不要です。

5.届出対象面積(第2項1号)

事後届出制は、全国どこの土地でも適用されますが、「一定の大規模な土地」についてだけ届出が必要になります。それでは、この「大規模」というのはどれくらいでしょうか。

この届出対象面積は、具体的には以下の面積です。
市街化区域…2,000㎡以上
市街化区域以外の都市計画区域(市街化調整区域及び非線引区域のこと)…5,000㎡以上
都市計画区域以外…10,000㎡以上

それぞれ届出対象面積「未満」なら届出が不要で、「以上」で届出が必要ということになります。

たとえば、市街化区域で2,000㎡といえば届出が必要となります。なお、「準都市計画区域」は都市計画区域外ですから、10,000㎡以上が届出対象面積になっています。

6.届出対象面積~「一団」の土地

さて、この数字を前提として、このように届出対象面積というのがあると、届出をしたくない場合には、土地を分断して売買すれば、届出は不要になってしまうということにもなりかねません。

たとえば、市街化区域内の3,000㎡の土地の売買契約は届出が必要になりますが、これを1,500㎡ずつに2回に分けて購入すれば届出が不要ということになってしまいます。

そこで、この届出対象面積に達しているかどうかは、「一団」の土地について判断することになります。先ほどの例でいえば、一つずつの土地の面積は、1,500㎡ずつで届出対象面積に達していないかもしれませんが、「一団」の土地取引と考えると、合計3,000㎡で届出対象面積に達しているので届出が必要になります。

7.届出対象面積~「一団」の判断基準

そして、この「一団」の土地取引かどうかは、「物理的一体性」と「計画的一貫性」によって判断されることになります。

物理的一体性というのは、隣り合った土地のように物理的にひとまとまりと考えられるような場合のことです。

計画的一貫性というのは、店舗を建てるなどの一定の計画の下に土地を購入するような場合です。

そして、この「一団」の土地取引と認定されれば、両方の土地取引に届出が必要となります。

8.届出対象面積~「売りの一団」と「買いの一団」

また、この一団の土地取引については、「売りの一団」と「買いの一団」というのを理解しておいて下さい。

「売りの一団」というのは、土地の分譲などを行う場合のことです。売主が一人で、買主が複数という場合です。一つの土地を何区画かに分けて複数の人に分譲するような場合を「売りの一団」といいます。

次に、「買いの一団」というのもあって、これは売主が複数いて、買主が一人という場合です。つまり、土地を一定の計画のために買い集めるような場合です。

このうち、事後届出が必要なのは、「買いの一団」だけであって、「売りの一団」については事後届出は不要です。

後で事前届出(注視区域・監視区域内での届出)というのも出てきますが、事前届出については、「買いの一団」だけでなく「売りの一団」の場合にも届出が必要となります。ここが混乱しやすいので気を付けて下さい。

9.届出が不要の場合

次に、届出が不要な例外についての説明です。

① 届出対象面積に達しない場合(1号、既述)

② 規制区域、注視区域又は監視区域に所在する土地について、土地売買等の契約を締結した場合(2号)

規制区域については許可制、注視区域又は監視区域については事前の届出制が取られていますので、事後届出は不要です。

③ 民事調停法による調停に基づく場合(3号)

④ 当事者の一方又は双方が国等である場合

⑤ 農地法第3条第1項(権利移動)の許可を受けることを要する場合

農地法の権利移動の許可を受けた場合ですが、ここに農地法5条の転用のための権利移動は入っていないことに注意して下さい。つまり、農地法5条の転用のための権利移動は事後届出が必要です。

10.事後届出の手続

それでは、土地売買等の契約がなされた場合に、この事後届出というのは、誰が誰に対してどのようにして届け出るのでしょうか。

(1) 届出者

まず、届け出るのは、「土地に関する権利の移転又は設定を受けることとなる者(権利取得者)」というのをよく覚えて下さい。「権利取得者」というのは、売買でいうと買主のことです。A→Bに売買契約がなされた場合に、届け出るのは売主(A)ではなく、当事者(A及びB)ではなく、権利取得者(買主B)のみだという点をしっかり覚えて下さい。

(2) 届出の期間

事後届出ですから、契約後に届け出るというのは分かりますが、期間に制限があります。「契約を締結した日から起算して2週間以内」です。「2週間」という数字は覚えて下さい。

(3) 届出先

どこへ届け出るかというと、「土地が所在する市町村の長を経由して、都道府県知事に届け出なければならない。」ということになります。市町村長を経由するというのも頭に入れておいた方がいいでしょう。

(4) 届出事項

それではどのような事項を届け出るのでしょうか。

① 土地売買等の契約の当事者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
② 土地売買等の契約を締結した年月日
③ 土地売買等の契約に係る土地の所在及び面積
④ 土地売買等の契約に係る土地に関する権利の種別及び内容
⑤ 土地売買等の契約による土地に関する権利の移転又は設定後における土地の利用目的
⑥ 土地売買等の契約に係る土地の土地に関する権利の移転又は設定の対価の額(対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積った額)
⑦ 前各号に掲げるもののほか、国土交通省令で定める事項

ここのポイントは、「当事者」「土地の利用目的」「対価の額」がポイントになります。

①ですが、「当事者」の氏名等を届け出るというのを覚えて下さい。届出をするのは権利取得者(買主等)ですが、届出書には売主等も含めた「両当事者」の氏名等を記載するということです。

⑤の「土地の利用目的」を記載するというのは当然です。もともと事後届出制は土地の有効利用というのが趣旨でしたから、その土地をちゃんと有効利用するのかどうかを判断するためです。この土地の利用目的が不適当な場合は、後で説明する「勧告」というのがなされます。

⑥の「対価の額」というのも記載します。売買契約の場合ならば売買代金のことですね。事後届出制は、土地の有効利用というのが趣旨であり、地価の高騰抑制という趣旨は後退していますので、この「対価の額」を記載しないといけないというのは、あまり理解できないんですが、最初に述べたように地価の高騰抑制という趣旨も頭に入れておいた方がいい、というのはこういうことがあるからです。しかし、届出書に「対価の額」を記載しないといけませんが、「対価の額」が不適当だということで、後述する「勧告」を受けることはありません。これは要注意です。

(5) 届出をしなかった場合の罰則

この事後届出を怠りますと、罰則もあります。「6月以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。

また、罰則については両罰規定というのがあって、会社の従業員や代理人がこの国土法の届出を怠った場合、その従業員や代理人だけでなく、会社(法人)や本人も罰金刑を科されます。ただ、法人を懲役刑に処すわけにはいきませんので、罰金刑だけです。

ただ、事後届出をしなかったからといって契約の効力に影響を及ぼすことはありません。もともと事後届出なので、契約は終わっているんですが、後で契約の効力を否定されたりすることはないということです。