建築基準法施行令2条(面積、高さ等の算定方法)
【解説】
1.敷地面積(第1号)
敷地面積は、敷地の水平投影面積によります。水平投影面積というのは、簡単に言うと、真上から見たときの面積を指します。だから、土地や建物に凹凸があったり、傾いていても、その表面積ではなく、真上から見たときの面積を指します。たとえば、斜面の場合、斜面自体の面積ではなく、図のように、屋根を真上から見た面積が水平投影面積です。
ただし、建築基準法42条第2項、第3項又は第5項の規定によって道路の境界線とみなされる線と道との間の部分の敷地は算入されないことになります。これは、いわゆる2項道路のような場合に、道路の中心線から2m後退した位置を道路の境界線とみなすような場合です。
したがって、このような部分は建ぺい率などの算定において、敷地面積から控除されることになります。
なお、建築基準法43条第2項の規定に基づく地方公共団体の条例における壁面等の後退、第46条の規定による壁面線の指定等は、敷地面積の算定に影響を与えません。
2.建築面積(第2号)
建築面積の定義は、カッコ書きがあって、ちょっと複雑ですが、要するに建築物が敷地をどの程度おおっているかを示しています。
原則としては、建築面積は、建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積で決まります。ポイントは、まず外壁等の「中心線」囲まれた部分で測ります。
次に、水平投影面積によりますから、建築物の地上の各階のそれぞれの水平投影面積によって形成された最大投影面積ということになります。
ただ、これには例外が2つあり、カッコ書きで示されています。
一つ目は、地階で地盤面上1メートル以下にある部分は除かれます。「地階」の定義は第2号にありますが、「床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの3分の1以上のもの」をいいますので、地階が地盤面上に出ている場合でも、地階と扱われる場合があります。そのような場合で、地盤面上1メートル以下にある部分は、地下にあるものとみなして建築面積には算入しないことになります。
例外の二つ目は、軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので、外壁又はこれに代わる柱の中心線から水平距離1メートル以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離1メートル後退した線で囲まれた部分の水平投影面積によって建築面積を算定します。
3.床面積(第3号)
建築物の床面積は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によりますが、建築物の各階、その一部というふうに限定された概念であり、抽象的に単に床面積という概念はありません。たとえば、建ぺい率は、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合(法53条1項)というように、いきなり「建築面積」「敷地面積」という言葉が出てきますが、床面積については2階の床面積、居室の床面積、客席の床面積というように、何らかの修飾語が伴います。
したがって、「壁その他の区画」の判定は、規制の内容に応じて、その規制の実効性を確保するように行う必要があります。たとえば、鉄筋コンクリート造の場合は、鉄筋コンクリートの躯体、PC板(プレキャストコンクリート板)等の中心線とされており、内外の仕上げの厚さは考慮しません(建設省住指発第115号 昭和61年4月30日)。
4.延べ面積(第4号)
延べ面積は、各階の床面積の合計です。これは建築物の1棟の面積的大きさ、容積的大きさを把握するためである。
少しややこしいのは、本号イ~ホにおいて、自動車車庫等部分などの床面積は、延べ面積に算入されないという点ですが、この点については本号だけではなく、本条第3項も併せて見る必要があります。
第3項によると、延べ面積に算入されない自動車車庫等部分などの床面積は、一定限度に限られます。たとえば、自動車車庫等部分の床面積は、当該敷地内の建築物の各階の床面積の合計の5分の1を限度として床面積に算入されないことになります。
5.築造面積(第5号)
築造面積は、工作物の規模を示す用語で、建築物の「各階の床面積の合計」に相当する言葉です。
その算定方法は、原則として工作物の水平投影面積によりますが、国土交通大臣が別に算定方法を定めた工作物については、その算定方法によります。
6.建築物の高さ(第6号)
建築物の高さは、「地盤面」からの高さになります。「地盤面」の定義は、第2項に規定があります。
ただ、これには例外があります。
(イ)まず、法第56条第1項第1号(道路斜線制限),令第130条の12(道路斜線制限に係る建築物の後退距離の算定の特例)及び令135条の19(容積率の算定に当たり建築物から除かれる部分)の高さについては、前面道路の路面の中心からの高さになります。
(ロ)階段室、昇降機塔等は、屋上に突出して設置されるのが普通であり、これらを建築物の高さに含めるのは妥当ではないので、階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分の水平投影面積の合計が当該建築物の建築面積の8分の1以内の場合においては、その部分の高さは、12メートルまでは、当該建築物の高さに算入しないことになっています。
ただし、法第33条(避雷設備)及び法第56条第1項第3号(北側斜線制限)に規定する高さ並びに法第57条の4第1項(特例容積率適用地区)等を算定する場合は除かれているので、これらの場合は屋上突出物の高さの軽減は行われません。
(ハ)棟飾、防火壁の屋上突出部その他これらに類する屋上突出物は、当該建築物の高さに算入されません。なお、パラペットについては、金網、柵その他見通しのきくものを除いて、高さに算入されます。
7.軒の高さ(第7号)
建築基準法は、建築物の高さだけでなく、「軒の高さ」という規定もあります。
本号によると、軒の高さは、軒先の高さではなく、「地盤面から建築物の小屋組又はこれに代わる横架材を支持する壁、敷桁又は柱の上端までの高さ」ということになります。
なお、第130条の12第1号イ(前面道路との関係についての建築物の各部分の高さの制限に係る建築物の後退距離の算定の特例)の場合には、地盤面からではなく、前面道路の路面の中心から上記の部分までになります。
8.階数(第8号)
「階数」というのは、1棟の建築物について、いくつの階を有しているかを表すものです。地階も含みます。
たとえば、地下1階、地上2階の建物の階数は、「3」ということになります。
この階数について、昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分で、水平投影面積の合計が当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは、当該建築物の階数に算入されません。
同様に、地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計が当該建築物の建築面積の8分の1以下のものも、当該建築物の階数に算入しません。
また、建築物の一部が吹抜きとなっていたり、建築物の敷地が斜面又は段地である場合その他建築物の部分によって階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによります。
9.地盤面(第2項)
本号は「地盤面」の定義ですが、「建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さ」になります。
本号の後段は、分かりにくいかもしれませんが、建築物が周囲の地面と接する位置の高低差が3メートルを超える場合には、その高低差3メートル以内ごとの平均の高さとされています。「高低差3メートル以内ごと」の平均の高さですから、一つの建物でも、建物の部分によって複数の地盤面が存在することになり、それぞれの部分の建築物の高さ等に反映することになります。
なお、本号の定義は、令2条1項2号(建築面積に算入しない地階の部分の判別)、6号(建築物の高さ)、第7号(軒の高さ)についての定義であり、令1条2号(地階)に規定する地盤面は含まれていません。