建築基準法52条(容積率)
【解説】
1.容積率
さて容積率ですが、容積率は延べ面積の敷地面積に対する割合のことです。数式で言えば、
であらわすことができます。これは建ぺい率と異なって、敷地面積に対する「延べ面積」の割合ですから、各階の床面積を足します。建ぺい率はどんなに頑張っても10/10が限界でしたが、全部の階を足すと100%を超えてくる場合もあります。
2.指定容積率(第1項1号~4号、6号)
この容積率は、すべて都市計画で定められます。建ぺい率も基本的には都市計画で定められますが、唯一商業地域の建ぺい率のみ8/10一本で建築基準法という法律で定められていましたので、ここに微妙に違いがありますので要注意です。
ということで、容積率はすべて都市計画で定められるということは、同じ用途地域でも地域によってまちまちなので、資格試験などでは基本的には問題文に書かれています。この都市計画で定められた容積率を「指定容積率」ということもあります。
3.高層住居誘導地区(第1項5号)
高層住居誘導地区については、容積率に特別な扱いがなされます。
高層住居誘導地区については、このサイトでも都市計画法のところで説明しています。
ここのポイントは「住居部分が2/3」以上あるところは、指定容積率の「1.5倍」以下の範囲で容積率を緩和するという部分です。
マンションなどを都心部に誘導するのが、高層住居誘導地区でした。それではどのようにしてマンションを誘致するのかというと、このように容積率を緩和するわけです。マンションなどを建ててくれれば、容積率を優遇しますよ、ということです。
4.道路容積率(第2項)
容積率は基本的に都市計画で定められますが、それだけではなく、前面道路からも制限されます。
つまり、容積率はまず都市計画で定められますが(試験的にいえば問題文に書かれている容積率)、敷地が接する前面道路からも容積率が制限されます。
というのは、容積率がなぜ制限されるかというと、延べ面積が大きい建物が建ちますと、人の出入りが多くなり、道路等の公共施設の整備が追いつかなくなるからです。
したがって、容積率は前面道路からも制限されてくるわけです。
ただ、すべての場合に前面道路から容積率が制限されるわけではなく、前面道路の幅員が「12m未満」の場合だけです。この「12m」という数字は覚えておいて下さい。問題を解くときに必要になります。
したがって、12m以上の道路に面しているときは、前面道路から容積率が制限されることはなく、指定容積率一本です。
これに対して、12m未満の道路にしか接していない土地は、指定容積率と前面道路からの容積率の2つの容積率が出ることになります。そして、2つの容積率が出る場合は、小さいほうの容積率を採用するということです。
また、前面道路が二以上あるときは、広い方の道路の幅員を基準に道路容積率を出します。
そして、道路容積率の出し方ですが、住居系の用途地域の場合は、道路の幅員に4/10を掛けます。
前面道路が6mだったら、「6m×4/10=24/10」ということになります。
住居系以外の用途地域の場合は、6/10を掛けます。
同じく前面道路が6mだったら、「6m×6/10=36/10」ということになります。
そしてこの「4/10」と「6/10」という数字は覚えておいて下さい。
これは問題文には書かれていません。自分の頭の中に入っている数字を使います。
「道路は大きい方」「容積率は小さい方」というのは混乱せずにしっかり覚えておいて下さい。
5.容積率の緩和措置
容積率というのは、多くの特例的な緩和措置が規定されています。以下、具体的に見ていきましょう。
(1) 建築物の地階(第3項)
この条文はかなりややこしい規定になっていますので、簡単に要約しておきましょう。
「建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1メートル以下にあるものの住宅の用途に供する部分の床面積(当該床面積が当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の3分の1を超える場合においては、当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の3分の1)は、算入しないものとする。」
建築物の地階の場合、ポイントは住居部分の「1/3」を限度に容積率が緩和されるという点です。数字をしっかり覚えて下さい。
(2) 共同住宅の共用の廊下又は階段(第6項)
ここも条文の引用で、ややこしいので、簡略化しておきます。
「建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分の床面積は、算入しないものとする。」
要するに、容積率の算定の基礎となる延べ面積には、「昇降機の昇降路」「共同住宅の共用の廊下若しくは階段」の部分は算入しないということです。
ちょっと注意して欲しいのは、「共同住宅の」という言葉が、「廊下」「階段」にはかかっていますが、「昇降機の昇降路」という言葉にはかかっていないということです。つまり、エレベーターの昇降路の部分の容積率不算入の対象となる建築物の用途は限定されていないということです。
まとめると、下記の3つについて容積率の延べ面積不算入の対象となり、実質的に容積率が緩和されます。
① 昇降機の昇降路(用途は問わない)
② 共同住宅の共用の廊下
③ 共同住宅の階段
(3) 特定道路(第9項)
まず、この特定道路に接する場合の容積率の緩和については、図を示しておきますので、それを見ながら説明を読んで下さい。
この規定は、要するに直接大きな道路に接してはいないが、大きな道路から少し脇道に入った道路でも、一定の容積率の緩和措置があると覚えておけばいいでしょう。
(4) 計画道路(第10項)
この規定は、計画道路がある場合は、今ある実際の道路幅員ではなく、計画道路の道路幅員で考えることで、容積率の緩和措置があるということです。
6.二以上の地区又は区域にまたがる場合(第7項)
建築物の敷地が建築物の容積率に関する制限を受ける地域、地区又は区域の二以上にわたる場合の規定です。
この場合の当該建築物の容積率は、当該各地域、地区又は区域内の建築物の容積率の限度にその敷地の当該地域、地区又は区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければならない。
これは加重平均主義といわれるもので、それぞれ土地の面積に応じて按分(あんぶん)して容積率を決めるということです。