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建築基準法6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)

【解説】

1.建築確認とは

建物を建てるにあたってはいろいろな規制があります。その規制を定めているのがまさに建築基準法です。

しかし、世の中には法律の規定に適合しない違法建築物を建てようとする人もいますし、たとえ法律に適合した建物を建てようとしている人でも、建築の法規は複雑ですので、うっかり法律に適合しない建物を建ててしまう場合もあるでしょう。

そして、法律に適合しない建物を建てた場合に、後でこの建築物は違法建築物ですから、建物を建てなおして下さいとか、建物の一部を変更して下さいと言われれば非常に無駄になります。

それならば、建物の設計をした段階で、事前に法律に適合しているかどうかをチェックしてもらった方が、建物を建てなおしたりするような無駄がなくなりますし、もともと違法建築物を建てようとしている人をチェックすることもできます。

このように今から建てようとしている建物が本当に法律に適合したものであるかどうか事前にチェック、確認しようというのが建築確認の制度です。

2.建築確認が必要な場合

さて、この建築確認ですが、すべての建物に建築確認が必要だというわけではありません。建築確認が不要な建物というのもあります。そこで、この建築確認が必要な場合、不要な場合というのが問題になります。

これは非常に重要ですのでしっかり覚えて下さい。

上図を見て下さい。まず、大雑把に言うと建築確認が必要な建築物は、①特殊建築物、②③の大規模建築物、④都市計画区域・準都市計画区域内の建築物になります。

そして、①特殊建築物と②③の大規模建築物は全国どこでも建築確認が必要となるのに対し、④は当然都市計画区域・準都市計画区域内の建築物に限ります。

そして、①特殊建築物と②③大規模建築物は一定の規模以上の大きな建物に限って建築確認が必要とされますが、④都市計画区域・準都市計画区域内の建築物は、その用途規模を問わず建築確認が必要となり、小規模な建築物も建築確認の対象となります。

後は①特殊建築物と②③大規模建築物の具体的な規模の要件を覚える必要があります。

3.建築確認が必要な場合~特殊建築物(第1号)

この特殊建築物というのは具体的には、以下のものになります。

①劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類するもの
②病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎その他これらに類するもの
③学校、体育館その他これらに類するもの
④百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場その他これらに類するもの(ex.コンビニエンスストア)
⑤倉庫その他これに類するもの
⑥自動車車庫、自動車修理工場その他これらに類するもの

以上のように特殊建築物は具体的には建築基準法に列挙されていますが、まとめると「不特定多数の者が利用する建築物、あるいは火災の発生のおそれや衛生・環境などに問題のある」建築物です。

そして、これらの特殊建築物はあまり神経質に覚える必要はなく、具体例を見ながら「確かに人の出入りが多いな」などと見ていけば試験で具体例で出たとしてもそれほど困ることはありません。

念のため、ちょっと分かりにくいかな?と思うもので、試験に出題されているのは、「倉庫・自動車車庫」です。

次は、特殊建築物で建築確認が必要な規模ですが、「100㎡を超える」場合です。100㎡という数字は絶対に覚える。建築確認の問題は具体例で出ることが多いので、この面積を覚えていないのは致命傷です。ただ、「100㎡」というのは区切りがいいので覚えやすいでしょう。

そして意外に重要なのは「超える」という部分です。「超える」というのは、「その数字を含みません」ので100㎡ちょうどというのは建築確認が不要です。

【参考】建築基準法コラム~「以上」「超える」等の覚え方

4.建築確認が必要な場合~木造の大規模建築物(第2号)

次は、大規模建築物ですが、これは「木造建築物」と「木造以外の建築物」で建築確認が必要とされる規模の要件が異なります。

そこでまず、「木造建築物」ですが、これは数字を覚えるのが大変ですね。

ここも、高さの「13m」、軒高の「9m」、延べ面積の「500㎡」は「超える」になっていますが、階数の「3階」というのは「以上」になっています。そして、ここの階数は地階を含みます。地上2階、地下1階は、合計3階で建築確認が必要だということですね。

そして、もう一つ押さえて欲しいのは、「又は」という言葉です。「又は」ですから、要件のうちの一つでも満たせば、建築確認が必要だという点です。つまり、高さも軒高も延べ面積も要件以下の数字であったとしても、階数が3であれば、それは建築確認が必要だということです。

5.建築確認が必要な場合~木造以外の大規模建築物

次は、大規模建築物のなかの「木造以外の建築物」ですが、木造以外ですから、たとえば鉄骨造や鉄筋コンクリート造等です。

この場合の規模の要件は覚えやすいと思います。「2階」と「200㎡」ですから、いずれも「2」という数字を覚えておけばいいでしょう。

ここも、「又は」という点を注意。どれか一つでも要件を満たせば、建築確認が必要です。

ここで、鉄骨造や鉄筋コンクリート造というのは、木造より丈夫なので、規模の要件が厳しくなっている、つまり小さな建物にも建築確認が必要になっていることに疑問を感じる方もおられるかと思いますが、鉄骨造等は丈夫な分、後で建物の変更等がききにくいので、小さな建物でも建築確認という形で事前のチェックが必要となっているようです。

最後に、特殊建築物・大規模建築物は数字が多く出てきますので、大変だと思いますので、ゴロ合わせを載せて

おきましょう。

6.建築確認が必要な場合~都市計画区域内等

最後の都市計画区域・準都市計画区域内の建築物は、用途・規模に関係なく建築確認が必要なので、これは数字などを覚える必要はありません。ただ、より正確には、「都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物」というのもここに含まれるという点も確認しておいて下さい。

7.建築確認が必要な場合~増改築

以上建築確認が必要な建築物という話をしましたが、これは建築物を新築する場合です。

そして「建築」というのは、増改築移転も含みます。それでは、先ほど説明した建築物について、新築ではなく、増改築移転の場合はどうか、という話を次にします。

この増改築移転についても、新築で建築確認が必要な建築物は、基本的に増改築移転でも建築確認が必要です。

ただ、一つ気を付けてもらいたいのは、「防火地域・準防火地域以外で10㎡以内は建築確認が不要」という点です。

防火地域・準防火地域は、後で本格的に勉強しますが、火災等の危険が心配な地域であるということは分かると思います。したがって、この地域は10㎡以内の小さな増改築移転も建築確認が必要です。

ただ防火地域・準防火地域以外では、10㎡以内の小さな増改築移転には建築確認が不要です。ちなみに、ここでは「以内」という言葉が出てきますが、10㎡「以内」が建築確認が不要ということは、10㎡を「超える」ときに建築確認が必要という意味ですから、「以上」「超える」の覚え方の法則に合致しています。

この「増築」については、もう一点覚えておいて欲しいことがあります。増築後に上記の規模になる場合には建築確認が必要となるということです。たとえば、木造の建築物で、490㎡の建築物を20㎡増築して、510㎡にしたとします(延べ面積以外の要素は省いて考えて下さい)。これに建築確認が必要かどうかです。つまり、この場合増築前の延べ面積を基準に考えると建築確認は不要ですが、増築後の延べ面積を基準に考えると建築確認が必要となります。どちらか?ということです。

これは増築後の延べ面積を基準に考えるということです。したがって、この例では建築確認が必要となります。

それでは、木造の建築物で、防火地域・準防火地域以外の区域の495㎡の建築物を10㎡増築して、505㎡にした場合、建築確認は必要でしょうか?

これは不要です。

確かに、増築後の面積が500㎡を超えますが、防火地域・準防火地域「以外」の地域では、10㎡以内の増築には建築確認が不要だからです。

8.建築確認が必要な場合~大規模の修繕・模様替

次は「大規模の修繕・模様替」ですが、これは特殊建築物と大規模建築物(木造及び木造以外)については、建築確認が必要ですが、都市計画区域・準都市計画区域内の建築物については建築確認が不要です。

この「大規模」な修繕・模様替というのは、具体的にはどういう場合かというと、建築基準法に定義規定があって、「建築物の『主要構造部』の一種以上について行う『過半』の修繕・模様替」ということになります(第2条14号・15号)。そして、主要構造部というのは、「壁、柱、床、はり、屋根又は階段」ということになります(第2条5号)。

こういう問題はどうでしょうか。「都市計画区域内の木造で、延べ面積400㎡、階数が3の建築物の大規模な修繕については、建築確認が不要である。」

これは「×」。建築確認が必要です。

理由は、たしかに都市計画区域内の建築物ではありますが、木造建築物で階数が3ですから、「都市計画区域・準都市計画区域内の建築物」ではなく、木造の大規模建築物です。したがって、大規模な修繕・模様替えでも建築確認が必要です。

特殊建築物と大規模建築物(木造及び木造以外)は「全国」で適用されますので、「全国」の中には当然都市計画区域・準都市計画区域も含まれます。したがって、②大規模建築物に該当すれば、それが都市計画区域内の建築物でも、大規模な修繕・模様替えにも建築確認が必要ということです。「都市計画区域内」という言葉に騙されないように!

したがって、都市計画区域・準都市計画区域内の「小規模」な建築物について大規模な修繕・模様替えに建築確認が不要ということになります。

9.建築確認が必要な場合~用途変更

次は、用途変更です。この用途変更ですが、用途というのは、「使い方」という意味ですから、たとえば通常の住宅を、共同住宅に用途を変更するような場合です。

この用途変更の場合にも、建築確認が問題となるのは、建築物の用途によっては避難階段が必要になったりするので、建築確認でチェックする必要があるからです。

これは特殊建築物への用途変更だけ建築確認が必要となります。というのは、建築確認が必要な建築物の中で建築物の用途に着目しているのは、特殊建築物だけだからです。

大規模建築物は、構造(木造など)・規模に着目した概念です。つまり、用途は何であれ、一定の構造(木造など)・規模以上の建築物という意味です。

そして「都市計画区域・準都市計画区域内の建築物」はそもそも用途・規模を問いません。

したがって、用途変更で建築確認が必要なのは特殊建築物への用途変更だけ、という結論になるわけです。もちろん、この用途変更は「特殊建築物以外」の建築物を「特殊建築物」にする場合です。

延べ面積にも気を付けて下さい。その特殊建築物が100㎡を超える場合でないと建築確認は不要です。

ただ、この特殊建築物への用途変更について建築確認が必要だというのは、例外があって、用途変更でも「類似の用途」へ変更する場合は、建築確認は不要です。

これは下記の具体例を見てもらえば、イメージはつかめると思います。これは、下記の第1号どうし、第2号どうし … が「類似の用途」ということで、第1号から第2号へまたがるような場合は類似の用途ではありません。

[参照条文]建築基準法施行令第137条の17(建築物の用途を変更して特殊建築物とする場合に建築主事の確認等を要しない類似の用途)

10.建築確認の手続

第6条1項1号~4号に該当し、建築確認が必要とされた場合に、どのようにして建築確認をもらえばいいのか、という建築確認の手続がとなります。

この建築確認の手続も、試験などではよく出題されます。

11.申請者

まず、建築主が建築確認の申請をするということを覚えて下さい。

建築主の意味については、第2条16号参照。

なお、建築確認の申請には、周辺住民の同意などは必要ありません。気を付けて下さい。

12.建築確認~申請先

建築確認は、建築主事に申請します。

この建築主事については、第4条を参照して下さい。

ただ、この建築確認は、最近は民間に開放され、建築主事だけではなく、国土交通大臣又は都道府県知事から指定を受けた「指定確認検査機関」というところも行うことができるようになりました。

13.建築確認~審査期間

建築確認の申請を受けた建築主事は、特殊建築物と大規模建築物については35日以内に、都市計画区域・準都市計画区域内の一般建築物については7日以内に審査して確認(あるいは不確認)をしなければいけません。

簡単に言えば、特殊建築物と大規模建築物というのは、一定の床面積以上の大きな建築物について確認が必要とされるので審査に時間がかかるけれども、都市計画区域・準都市計画区域内の一般建築物は、小規模なので審査に時間があまりかからないということです。

この特殊建築物と大規模建築物の「35日」というのは、以前は「21日」だったんですが、現在は法改正で「35日」になっています。

とにかく、「35日」と「7日」という数字は覚えておいて下さい。

そして、当該建築物の計画が建築基準法等に適合していて問題がない場合は確認をしてくれますが、確認すれば確認済証というのを交付してくれます。

そして、この確認済証の交付を受ければ、建築や大規模の修繕・模様替などの工事を行うことができるようになります(第14項)

14.構造計算適合性判定

この構造計算適合性判定というのは、建築確認を申請する際に添付される構造計算が建築基準法等に適合しているかどうかを判定することです。

これは建築主事等が行う建築確認の審査に加えて道府県知事又は指定構造計算適合性判定機関が行います。

この手続は、建築主から建築確認の申請がなされると、建築主事等が道府県知事又は指定構造計算適合性判定機関に、この構造計算適合性判定を依頼します。

あくまで、建築主事等から依頼するのであって、建築主が依頼するのではありません。

そして、都道府県知事等は、構造計算適合性判定を求められた場合、当該構造計算適合性判定を求められた日から14日以内にその結果を記載した通知書を建築主事に交付しなければならないことになっています(第8項)。