建築基準法2条(用語の定義)
【解説】
目次
1.建築物(第1号)
本号は「建築物」の定義です。それによると、建築物とは、土地に定着する工作物のうち、以下のものです。
- 屋根及び柱若しくは壁を有する
- 1に附属する門若しくは塀
- 観覧のための工作物
- 地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所等その他これらに類する施設
そして、1.~4.に設けられる建築設備も含みます。
これらの建築物の定義は、建築物の構法や形態が多様化して、判断が難しくなっているので、「これに類する」構造や施設を含むというふうに表現されています。
なお、1.については注意して下さい。「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」ということですが、上記の条文は「屋根」及び「柱若しくは壁」の両方を有するという意味になります。
そして、「若しくは」というのは、どちらか一方を意味する言葉なので、
①屋根と柱
②屋根と壁
を有するものは、どちらも「建築物」ということになります。
つまり、建築物には屋根は必須です。建築というのは、俗に雨露を凌ぐという表現があるように屋根は必要だからです。屋根を支えるのは、柱でも壁でもどちらでもよい、という意味になります。
最後に全体をまとめておきましょう。
2.特殊建築物(2号)
本号の「特殊建築物」というのは、簡単に言えば、多くの人が出入りするような建物のことです。
本号では、具体的に特殊建築物に該当する建築物をひたすら列挙する形をとっていますが、これらの建築物の特徴は、より詳しく言えば、下記のような特性を持つ建築物です。
- 不特定又は多数の者の用に供する
- 火災発生のおそれ又は火災荷重が大きい
- 周囲に及ぼす公害その他の影響が大きい等
この本号の規定から分かりますように、特殊建築物というのは、建築物の用途に着目した概念です。木造か鉄筋コンクリート造か、のような建築物の構造に着目した概念ではありません。
共同住宅であれば、木造であれ、鉄筋コンクリート造であれ、特殊建築物に該当するわけです。
このような特殊建築物は、上記のような特徴から特別の規制をする必要が大きいので、このような定義規定をおいたわけです。
なお、具体的な規制によって、それぞれの関係規定ごとに、その立法趣旨によって、さらに限定列挙していることが多くなっています。
3.建築設備(第3号)
この建築設備も、具体的なものを列挙しているだけの規定になっていますが、建築設備は、建築物と一体となって、建築物の効用を全うするための設備とされます。
この建築設備は、「建築物」に含まれます(第1号)。
本号で列挙されている建築設備は、「動力」に着目して定められているものと、「機能」に着目して定められているものに分けられます。
動力に着しているのは、電気設備、ガス設備です。
機能に着目しているのは、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針です。
このように着目している観点が違うので、ある建築設備がその両方に区分されることがあります。
たとえば、モーターを有する給水設備は、同時に電気設備ですし、空気調和設備は換気、暖房又は冷房の設備であり、電気設備でもあるだけでなく、冷却水を用いるものは給水及び排水の設備である部分をも有することになります。
なお、政令で指定する昇降機その他の建築設備を建築物に設ける場合においては、建築確認が必要になる場合があります(第87条の2)。
4.居室(第4号)
本号は、「居室」の定義ですが、居室については、採光及び換気(第28条)などについて規制があります。
この居室は、居住などの目的のために「継続的に使用」する室をいうと定義されていますが、この「継続的に使用」というのは、特定の者が継続的に使用する場合だけでなく、不特定の者が特定の室を継続的に使用する場合も含みます。
具体例としては、住宅の居間、寝室、事務所の事務室、会議室、守衛室、商店の売場、店員休憩室、工場の作業場、集会室、ホテルのロビー、映画館の客席ホール、喫茶店の客席、厨房、公衆浴場の脱衣室、浴室などが、これに該当します。
5.主要構造部(5号)
本号は、延焼の防止等の防火上の観点から規制を加える必要のある建築物の部位を主要構造部として規定しています。
本号で「構造上」という言葉が用いられていますが、これは構造耐力、一般構造等構造工学的な観点で用いられているわけではありません。
このような構造耐力上の観点からの定義は、「構造耐力上主要な部分」として建築基準法施行令1条3号に規定があり、本号の「主要構造部」とはその範囲が異なります。
したがって、本号は、上記のような防火上観点から定められていますので、外壁や主要な間仕切り壁について構造耐力上重要でないものであっても、防火上の観点から主要構造部とされている場合があります。たとえば、居室や避難施設である廊下との区画を構成する間仕切り壁は、主要構造部に該当することになります。
また、この主要構造部の中に基礎が入っていないという点も、この防火上という観点から理解できると思います。基礎は地盤の中にあるので、火災の際に燃えるということはないからです。
階段が含まれているのは、避難非難の際に重要な役割を果たすからです。
6.延焼のおそれのある部分(第6号)
「延焼のおそれのある部分」というのは、主として木造建築物の延焼防止のための概念です。
そして、主要構造部(第5号)が火災が起こった場合に建物が倒壊しないという内部的な防火性を表しているのに対し、延焼のおそれのある部分というのは、外部からの延焼を防ぐという意味があります。
建築物の延焼というのは、2つの建築物の相対的な位置によって決まります。そこで、同一敷地内の二以上の建築物の場合、建築物の相互の外壁間の中心線から、一階にあっては3メートル以下、二階以上にあっては5メートル以下の距離にある建築物の部分が、延焼のおそれのある部分になります。
このように1階より2階の方が延焼のおそれのある部分が大きいのは、延焼を受けない限界(建築物が燃えない限界)は,火源から立ち上がる放物線の外側部分になりますので、1階より2階以上の方が延焼限界の距離が離れているからです。
次に、同一敷地内の二以上の建築物がある場合以外に、隣地境界線又は道路中心線からの距離も基準としています。これは、隣地境界線に近接して建築物が建築されたり、道路の向かい側に建築物が建築されることも想定されるからです。隣地は「境界線」、道路は「中心線」というのも確認しておいて下さい。
7.耐火構造(第7号)
(1)耐火構造(耐火と防火)
耐火構造というのは、主要構造部を対象として定められる構造方法です。
そして、主要構造部が耐火性能を有するものです。耐火性能というのは、「通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能」ということになります。
その準耐火性能の技術的基準として、なお、この「耐火」と似たものとして「防火」というのがありますが、耐火構造・準耐火構造というのは、「建物内で発生する火災」と「建物の周囲で発生する火災」の両方を考慮します。要するに、外部からも内部からもどちらに対しても火災に対して強くないといけません。そのために建築物の倒壊防止と延焼の防止が必要となります。
これに対して、防火構造というのは、「建物の周囲で発生する火災」だけを考慮します。隣家からの火災に対して延焼を受けないようにするわけです。したがって、外部からだけに抵抗することが主目的となります。
(2)耐火性能
上記のように、耐火性能というのは、建築物の「倒壊」及び「延焼」の防止です。
① 倒壊の防止
倒壊の防止というのは、荷重を指示する壁(耐力壁)、柱、床、はり、屋根、階段が火災によっても崩壊せず、性状を保持していることが必要です。
令107条1号に規定がありますが、おおむね上階より下階の方が長い時間荷重を支持する必要があります。下階の方が倒壊すれば、建物全体が倒壊する以上、当然です。
② 延焼の防止
延焼の防止のためには、倒壊の防止とともに、屋内から屋内の他の部分、屋外から屋内への延焼を防止する必要があります。
そのために、壁及び床については、通常の火災による火熱が1時間(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分にあっては、30分間)加えられた場合、当該加熱面以外の面(裏面)(屋内に面するものに限る。)が、当該面に接する可燃物が燃焼するおそれのある温度(可燃物燃焼温度)以上に上昇しないことが必要です(令107条2号)。
また、外壁及び屋根については、通常外壁の屋外側に多量の可燃物があるおそれは少ないので、屋内側からの加熱に対しては、裏面の温度の上昇は許容されますが、屋外側に火炎を出さないようにする必要があります。すなわち、屋内において発生する通常の火災による火熱が1時間(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分及び屋根にあっては、30分間)加えられた場合に、屋外に火炎を出す原因となるき裂その他の損傷を生じないことが必要となります(令107条3号)。
7-2.準耐火構造(7号の2)
準耐火構造も、耐火構造と同様、主要構造部について定められる構造方法で、主要構造部が準耐火性能を有するものです。準耐火性能というのは、「通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能」ということになります。
耐火性能の場合と異なり、「建築物の倒壊の防止」というのが含まれていません。準耐火性能の基準となる加熱時間について45分間としていますが、これは通常の火災の継続時間が1時間であるのに対し、通常期待される消防活動が行われた場合の延焼を防止することができる時間になります。
その他の要件は、基本的に耐火性能と同様です。
8.防火構造(第8号)
防火構造というのは、建築物の外壁又は軒裏を対象としています。そして、これらについて防火性能を要求していますが、防火性能というのは、「建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼を抑制するために当該外壁又は軒裏に必要とされる性能」です。つまり、「建物の周囲で発生する火災」のみを考慮したもので、「建物内で発生する火災」は考慮していません。
具体的な防火性能に関する技術的基準は、令108条に規定されています。それによると、外壁のうち耐力壁については、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであることが必要です。外壁及び軒裏については、加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないことが必要です。
そして、防火性能の加熱時間については、屋内への延焼を防止するために必要な時間を30分としています。これは、防火構造が要求されているのは、準防火地域内の小規模な建築物、22条指定区域内の特殊建築物、大規模な木造建築物等の外壁・軒裏であり、準耐火構造と比較して、稠密な市街地以外の市街地の建築物、比較的小規模な建築物であることと、準耐火構造は屋外だけでなく屋内の火災も考慮する必要があるのに対し、防火構造は屋外の火災だけを考慮すればいいからです。
【参照条文】第109条の6(準防火性能に関する技術的基準)
8-2.準防火性能
この準防火性能は、建築基準法23条で、いわゆる22条指定区域の木造建築物等において、外壁で延焼のおそれのある部分に要求される性能である。
建築基準法23条で準防火性能は、「建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼の抑制に一定の効果を発揮するために外壁に必要とされる性能」とされており、その具体的な技術的基準が本条である。
その内容は、基本的には防火性能と同じであるが、加熱時間が防火性能では30分のところ、準防火性能では20分となっている。
9.不燃材料(第9号)
(1) 総論
室内において火災が発生すれば、室内の温度が上昇し、最終的には多量の煙・ガスが発生します。この過程において、内装に燃焼しにくい材料を用いれば、煙・ガスの発生を防止することができ、安全に非難することができます。
そこで、建築基準法は、材料の燃焼性状等に応じて、不燃材料、準不燃材料、難燃材料に区分し、一定の建築物の内装等に用いることを義務づけています。
(2) 不燃材料
不燃材料は、不燃性能を有するものとされていますが、その不燃性能は令108条の2に規定されています。
それによると、通常の火災により火熱が加えられた場合に、
- 燃焼しない
- 防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じない
- 避難上有害な煙又はガスを発生しない
という要件を満たしている必要があります。
そして、これらの不燃性能の所要時間は、加熱開始後20分間とされています。この時間は、建築材料の近くにある家具等が燃焼している状態を想定した場合に、20分間の加熱を考慮すれば十分だからです(なお、この時間が10分間であれば準不燃材料、5分間であれば難燃材料です)。
ただ、屋根等の建築物の外部の仕上げに用いるものにあっては、煙やガスが非難に支障を与えることはないので、避難上有害な煙又はガスを発生しないという要件は不要です。
具体的な不燃材料は、建設省告示第1400号(平成12年5月30日)によって、以下のものが挙げられています。
一 コンクリート
二 れんが
三 瓦
四 陶磁器質タイル
五 繊維強化セメント板
六 厚さが3ミリメートル以上のガラス繊維混入セメント板
七 厚さが5ミリメートル以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
八 鉄鋼
九 アルミニウム
十 金属板
十一 ガラス
十二 モルタル
十三 しっくい
十四 石
十五 厚さが12ミリメートル以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6ミリメートル以下のものに限る。)
十六 ロックウール
十七 グラスウール板
9-2.耐火建築物(第9号の2)
耐火建築物とは、「主要構造部」と「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分」の両方について、一定の性能を有している建築物です。したがって、耐火建築物は、「主要構造部を耐火構造とした建築物」とは異なり、開口部について一定の性能が要求されている建築物です
9-3.準耐火建築物(第9号の3)
準耐火建築物も、耐火建築物と同様、「主要構造部」と「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分」の両方について、一定の性能を有している建築物です。また、耐火建築物と同様、「主要構造部を準耐火構造とした建築物」とは異なり、開口部について一定の性能が要求されています。
なお、準耐火建築物は、耐火建築物と異なり、耐火性能検証に相当する検証方法は定められていません。
この準耐火建築物のうち、本号イにある「主要構造部を準耐火構造」としたもので、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に一定の防火設備を有するものは、「イ準耐」と呼ばれることがあります。
また、このイ準耐と同等の準耐火性能を有している建築物は、「ロ準耐」と呼ばれ、その具体的な技術的基準は、令109条の3で規定されています。
10.設計(第10号)
本号の「設定」の定義は、建築士法第2条第5項の規定によります。同法によると、「設計」とはその者の責任において設計図書を作成することをいいますので、製図作業、構造計算作業その他の実際の作業を補助者に担当させることはかまいませんが、その作業の最終的な責任は責任者になります。
11.工事監理者(第11号)
本条の工事監理者の定義も、建築士法第2条第7項の「工事監理」の規定によります。同法によると、「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することということになります。工事がちゃんと設計通りに行われているかどうかをチェックするということです。
なお、本号の工事監理者は、建築主の代理人的地位、施工者に対する指揮監督権などを有するものではありません。
12.設計図書(第12号)
本号は設定図書の定義の規定ですが、まず「建築物、その敷地又は第88条第1項から第3項までに規定する工作物」の工事用の図面及び仕様書が設計図書だとしています。実は、建築士法にも設計図書の定義があって、そこでは「建築物の建築工事の実施のために必要な図面及び仕様書」と規定しています。
本条の第10号に「設計」の定義がありますが、そこでは建築士法2条5項の規定をそのまま使っていますが、「設定図書」では、建築士法の規定をそのまま使わず、別途規定しているのは、建築士法においては「建築物」だけを問題としているのに対し、本号では「建築物、その敷地又は工作物」としており、敷地と工作物を付け加えているからです。
なお、本号では、工事用の図面についてかっこ書きで「現寸図その他これに類するもの」を除いていますが、これは、現寸図その他の施工図、加工図等は、施工過程で作成されるもので、設計図書を具体化したものにすぎないからです。
13.建築(第13号)
本号は、「建築」の定義ですが、建築とは、新築だけでなく、増築、改築、移転も含みます。どうしても「建築」というと新築だけを思い浮かべてしまいますが、建築基準法上の「建築」は、増改築移転も含むことになります。いずれにしても、建築物を造るという行為が必要で、修繕、模様替え、用途変更は「建築」の概念には含まれません。
本号の「増築」というのは、既存の建築物の延べ面積を増加させることをいいます。別棟で造る場合は、単体規定に関しては新築、集団規定に関しては増築として扱われます。
次に「改築」ですが、これは建築物の全部または一部を新しく造りなおすことをいいますが、建築物の全部又は一部を自分で除却する場合だけでなく、これらの部分が災害等によって滅失した場合に行う場合も含みます。ただ、新しく造り直す行為は、従来のものと用途、規模及び構造が著しく異ならないものである必要があります。
また、床面積の増減は問いませんが、増築に該当しないものであることが必要です。次号の大規模の修繕に該当しないものであることも必要です。なお、使用材料の新旧は必ずしも問いません。
最後の「移転」ですが、これは同一敷地内で建築物を移転する場合を指します。別の敷地に移転する場合は、新しい敷地での新築又は増築として扱われます。
14.大規模の修繕(第14号)
大規模の修繕というのは、建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいうとされていますが、主要構造部は「壁、柱、床、はり、屋根又は階段」です(第5号)。
そして、その主要構造部の「一種以上について行う過半の修繕」ということですから、過半の修繕に該当するかどうかは、主要構造部の種類区分ごとに判断されます。たとえば、柱と壁の修繕が行われた場合に、どちらも過半の修繕に至らない場合は、大規模の修繕に該当しませんが、どちらか一方が過半の修繕になれば、「大規模の修繕」に該当することになります。
次に「修繕」の意味ですが、既存の建物の部分に対して、おおむね同様の形状、寸法、材料により、当初の価値を回復する工事のことです。
15.大規模の模様替(第15号)
この大規模の模様替は、「過半」の判断基準は、前号の大規模の修繕と同じです。
前号とは、「修繕」と「模様替」の違いということになりますが、模様替は、既存の建物に対して同様の形状、寸法の工事という点では修繕と同じですが、材料や構造種別は異なるようにします。たとえば、木造の柱を鉄骨造の柱としたり、土塗りの壁をコンクリートブロック造の壁としたり、茅葺きの屋根を亜鉛鉄板葺きの屋根としたりするような場合です。
また、修繕のように当初の価値を回復するというより、当初の価値の低下を防ぐことを目的とします。
16.建築主(第16号)
本号は、「建築主」の定義です。建築主というのは、建築確認の申請(第6条)、工事監理者の設置(第5条の4)、建築工事の着工の届出(第15条)等の義務が課せられ、違反建築物に対する措置の対象となっています。
その定義は、「請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者」ということになります。したがって、住宅の建築を請負契約で依頼した場合は、注文者の方が建築主なのであって、請負人である建築会社、工務店等ではありません。もちろん、請負契約によらないで自分で工事する場合は、その工事をする本人が建築主になります。
17.設計者(第17号)
本号は、「設計者」の定義ですが、第10号に「設計」の定義、第12号に「設計図書」の定義があり、同じような話が繰り返されています。
設計者=その者の責任において、設計図書を作成した者(第17号)
設計=その者の責任において設計図書を作成すること(第10号)
設計図書=建築物、その敷地又は工作物に関する工事用の図面及び仕様書(第12号)
これらの条文をまとめると、「設計図書」(建築物・敷地・工作物に関する工事用の図面及び仕様書)を作成することを「設計」といい、その設計図書を作成した者を「設計者」ということになります。
なお、本条の後半は条文の引用があって長くなっていますが、構造設計一級建築士と設備設計一級建築士は、自ら設計図書を作成していない場合であっても、構造関係規定や設備関係規定の適合確認を行った場合は、本法において設計者として扱われる、という意味になります。
18.工事施工者(第18号)
工事施工者は、実際の工事に携わる者として、特定行政庁等による建築物等に関する工事の施工等の状況に関する報告徴収の対象となっています。(第12条5項)
その定義は、建築物等に関する工事の請負人又は請負契約によらないで自らこれらの工事をする者ということになります。
これは、第16号の建築主の定義と対応しています。建築主は「建築物に関する工事の請負契約の註文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者」とされており、請負契約の注文者が建築主、請負人が工事施工者ということになります。
自ら工事をする場合は、建築主と工事施工者は同じになります。
なお、工事施工者については、建築物だけでなく、敷地又は工作物も含まれます。
19.都市計画(第19号)
これは、あまり説明の必要がないと思います。
ちなみに、都市計画法第4条第1項によると、都市計画とは、「都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画」とされています。
20.都市計画区域又は準都市計画区域(第20号)
これも、あまり説明の必要がないと思います。都市計画区域及び準都市計画区域の定義も都市計画法の規定によります。
都市計画区域は、都市計画の内容を実行していく区域で、準都市計画区域は、都市計画の内容のうち一部を実行していく区域になります。
21.地域地区(第21号)
本号は、第一種低層住居専用地域~工業専用地域は都市計画法の用途地域、特別用途地区以下は、用途地域も含めて都市計画の一種である「地域地区」に関する定義ですが、これも都市計画法の定義によります。
22.地区計画等(第22~33号)
第22号から第33号の地区計画等の用語の定義も、同様に都市計画法その他の法律の定義による旨が規定されています。
内容は各法律によりますので、建築基準法としての解説は割愛します。
34.プログラム(第34号)
建築物が、自重、積載荷重等に対して安全な構造のものであることを確認する手段の一つとして、国土交通大臣の認定を受けたプログラムによるものによって確かめられる安全性を有することを定めています。
このプログラムの定義を定めた規定です。
35.特定行政庁(第35号)
特定行政庁というのは、本来は禁止されている道路内建築のようなものであっても、個々の現場に即して特別に許可できることとしたり、壁面線や2項道路をはじめ道路関係規定での「指定」など、建築確認の現場の実情をよく知る者として実務的に行う業務等を行う機関です。
具体的には、本号に規定があるように、建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事を指します。