目的

【解説】

1.目的

本条は、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」(以下、「被災マンション法」と書きます。)の目的が書かれていますが、分析すると下記の場合の法律であることが分かります。

建物の全部滅失の場合、①区分所有建物の再建、②その敷地の売却
建物の一部滅失の場合、③区分所有建物及びその敷地の売却、④区分所有建物の取壊し

それに加えて、この第1条には直接規定されていませんが、第4章で団地内の建物が滅失した場合の再建承認決議制度等も創設しています。

2.建物の全部滅失の場合

もともと、被災マンション法は、平成7年に阪神・淡路大震災を契機に生まれました。

大規模な災害などによって区分所有建物が全部滅失した場合には、区分所有建物自体がなくなっている以上、区分所有権も成立しえず、区分所有者も存在しなくなり、ひいては管理組合も存在しなくなります。そこには、元区分所有者が共有する敷地のみが残ることになります。

したがって、区分所有法62条の建替え決議をすることもできなくなります。建替え決議は、区分所有者の存在を前提としますし、「建替え」という言葉自体、旧建物を「取壊し」、新建物を建てることで、この場合、旧建物はすでに全部滅失しているからです。

そのような状態で区分所有建物を再建したければ、区分所有者全員の同意が必要になります。土地に建物を建てることは土地の変更行為にあたると考えられるからです(民法251条)。

しかし、マンションにおいて「全員」の合意というのは事実上不可能です。

敷地共有者(元区分所有者)の議決権の4/5の賛成で再建を認めたのが被災マンション法でした。

ここまでが、平成25年に法改正がなされる前までの被災マンション法の内容です(上記の「建物の全部滅失の場合の①区分所有建物の再建」まで)。

ところが、平成23年の東日本大震災において、ちょっと状況が変わってきます。

従来の被災マンション法が予定していた「建物の全部滅失の場合の①区分所有建物の再建」というニーズがほとんどなかったようなんです。

その代わりに、大規模一部滅失したマンションについて、区分所有者全員の合意により取り壊した事例があったのです。

そこで、「大規模な災害により区分所有建物が重大な被害を受けた場合に、区分所有建物及びその敷地の売却、区分所有建物の取壊し等の必要な処分を多数決により行うことを可能とする特別の措置を講ずる必要がある。」(法案提出理由)ということで、平成25年6月26日に被災マンション法の改正法が成立しました。

「建物の全部滅失の場合の①区分所有建物の再建」については、説明しましたので、②~④までを説明しましょう。

「建物の全部滅失の場合、②その敷地の売却」ですが、これは旧法においても問題になりえたと思いますが、旧法では規定されていませんでした。

共有物の売却は、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。

建物の再建ができないというような場合には、敷地を売却するしか方法はないでしょう。

しかし、それを行うにも「全員」の同意が必要で、これまた事実不可能という状況でした。

そこで、敷地共有者(元区分所有者)の議決権の4/5の賛成で敷地の売却を可能にしました。

3.建物の一部滅失の場合

次に、建物の一部滅失の場合についてですが、建物の一部滅失の場合は、建物は生き残っていますので、管理組合も存続しています。

したがって、区分所有法61条の復旧の規定や、62条の建替え決議を行うこともできます。

それでは、区分所有法の復旧や建替えの規定だけでまかなえるかというと、そうはいかなかったわけです。

先ほど書きましたように、東日本大震災で、区分所有者全員の合意により取り壊した事例が生じたわけです。

これは「全員」の合意があったからよかったものの、一人でも反対していれば、建物の取壊しはできません。

建物の取壊しは、共有物の変更行為ですから、全員の合意が必要だからです。

そこで、建物の一部滅失の場合でも、全員ではなく、多数決で取壊しができるようにする必要がありますし、敷地の売却を多数決で行う必要があるわけです。

ということで、改正法では、「建物の一部滅失の場合、③区分所有建物及びその敷地の売却、④区分所有建物の取壊し」というのも、4/5の多数決で行うことができるようにしました。

以上、話がややこしくなりましたので、全体を一覧表にまとめました。