住宅品質確保法95条(新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例)

【解説】

1.瑕疵担保責任の特例

住宅の品質確保の促進のための手段として、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、「品確法」という。)は瑕疵担保責任の特例を定めています。

瑕疵担保責任については、民法や宅地建物取引業法に規定がありますが、それだけでは不十分であるとして、定められたものです。

民法では、瑕疵担保責任の規定を置いていますが、買主に不利な特約でも、契約自由の原則から認められています。

宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者が自ら売主で、買主が宅地建物取引業者でない場合には、民法の規定より買主に不利な特約は認められていませんが、例外的に売主が瑕疵担保責任を負う期間を「引渡しから2年以上」とする特約は認められています。

また、民法でも、宅地建物取引業法でも瑕疵修補請求は認められていません。

そこで、品確法を制定し、瑕疵担保責任について買主の保護が図られています。

それでは、具体的に一つ一つの問題について見て行きたいと思います

2.目的物の範囲

品確法の瑕疵担保責任の特例は、「新築」「住宅」の「売買契約」について適用されます。

民法では「売買」の中に瑕疵担保責任の規定があり、動産・不動産を問わず適用されます。

しかし、品確法では「住宅」について適用されます(「住宅」の定義について第2条1項参照)。

したがって、住宅の「地盤」については、後述のように建物の「基礎」として瑕疵担保責任の対象となることはありますが、それ以外の地盤自体は対象となっていません。

なお、宅地建物取引業法では「宅地又は建物の売買契約」とされているので、土地も対象となっています。

そして、品確法の瑕疵担保責任の特例は、住宅でも「新築」の住宅にしか適用されません。したがって、中古住宅を購入した場合に、売主に対して瑕疵担保責任を追及する際に、品確法の瑕疵担保責任の特例が適用されることはありません。

このように、中古住宅が適用外とされたのは、そもそも中古住宅は瑕疵も含めて現状有姿で取引されるのが前提であり、瑕疵のないことを前提とする新築住宅とは異なります。

所有者が転々とした場合に、瑕疵がどの所有者の下で発現したかも不明確になります。

また、新築住宅の供給者は、ほとんどが事業者であるのに対し、中古住宅の場合は個人が売主となるので、個人に長期の瑕疵担保責任を負わせるのは不適当だからです。

なお、民法や宅地建物取引業法は、中古住宅にも適用されます。

3.瑕疵

品確法の瑕疵担保責任の特例の規定は、新築住宅の「瑕疵」すべてに適用されるわけではありません。瑕疵の中で「住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの」についてのみ適用されます。

「構造耐力上主要な部分」又は「雨水の浸入を防止する部分」ということですが、具体的には上記の品確法施行令5条に規定されています。

この「構造耐力上主要な部分」というのは、建築基準法で出てくる「主要構造部」とは異なります。「主要構造部」というのは、壁、柱、床、はり、屋根又は階段(建築基準法2条5号)ですが、それよりも広い概念となっています。

このように対象を住宅の構造耐力上主要な部分等に限定したのは、これらの部分に瑕疵があった場合、日常生活に支障をきたし、その修補にも多額の費用がかかります。また、基礎や柱などは、住宅完成後は内装等に覆われてしまう部分が多く、引渡し時に外観から瑕疵を発見することが困難なため、引渡し時から時間が経過した後に瑕疵の存在を知ることが多くなります。他方、住宅の構造耐力上主要な部分等「以外」の瑕疵について重い責任を課すのは売主にとって負担が大きすぎますし、住宅の取得者にとっても不利益は小さいからです。

4.責任追及の方法

瑕疵担保責任の追及の方法は、民法及びそれに基づく宅地建物取引業法では、解除と損害賠償請求が規定されており、瑕疵修補請求については認められていません。

しかし、品確法においては瑕疵修補請求についても認めています。

その部分の条文の表現(第1項)が分かりにくくなっていますが、民法566条1項を準用しているので解除・損害賠償請求を認めています。

次に、第634条第1項及び第2項前段を準用しており、この部分に瑕疵修補請求が規定されていますので、解除・損害賠償請求だけでなく、瑕疵修補請求も認めるということになります。

5.責任追及期間

民法においては、瑕疵を知ってから1年間瑕疵担保責任を追及することができましたが、この点について、買主に不利である特約も、契約自由の原則から認められており、期間の短縮も可能です。

宅地建物取引業法においては、宅地建物取引業者が自ら売主で、買主が宅地建物取引業者でない場合でも、引渡しから2年以上とする特約も認められています。

そこで、品確法では、売主は、買主に引き渡した時から10年間瑕疵担保責任を負わなければならないことになっています(第1項)。ただし、契約の解除、瑕疵修補又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならないとされています(第3項)。

このあたりは、少し分かりにくいかもしれません。

もともと民法の瑕疵担保責任においては、買主が知ってから1年以内に瑕疵担保責任を追及しなければいけませんが、引渡しから10年経過すれば、解除・損害賠償請求権は時効で消滅するとされています。

ということは、品確法でも民法でも、結局「買主が知ってから1年以内、ただ引渡しから10年経てば責任を追及できない」ということになります。

これだと、解除と損害賠償請求に限っては、品確法は「特例」としての意味がないのではないかという気がしますが、第2項で買主に不利な特約は認められていないので、買主に不利な特約も認められる民法とは、やはり異なります。また、品確法では第97条で「引き渡した時から20年」まで瑕疵担保責任の期間を延長することが認められています。

なお、この「引渡し」の意味ですが、第1項にかっこ書きがあり「当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時」となっています。

たとえば、売主Aが、建設会社Bに依頼して建築した建物を、買主Cに対して売却した場合を考えますと、「引渡し」というのは、売主Aから買主Cへの引渡し時点なのかという問題です。しかし、そうではなく「当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時」ということですから、建設会社Bから売主Aへ引渡された時点だということです。したがって、この場合に買主Cが売主Aに対して追及する瑕疵担保責任は、BからAへの引渡しから10年間ということになります。これは、第94条により建設会社Bも注文者(売主A)に対して瑕疵担保責任を引渡しから10年間負うことになっていますが、この期間と連動させるためです。

6.買主に不利な特約(第2項)

品確法の瑕疵担保責任の特例の規定は、買主を保護するためのものであり、買主に不利な特約は無効とされています。

これは片面的強行規定であり、買主に有利な特約は認められます(ただし、瑕疵担保責任の期間の上限については20年が限界(第97条))。

7.他法(民法・宅地建物取引業法)との関係

新築住宅の瑕疵担保責任について、品確法が適用される場合でも、民法や宅地建物取引業法の適用が排除されるわけではありません。

たとえば、宅地建物取引業者が自ら売主で、買主が宅地建物取引業者でない場合において、瑕疵担保責任の追及期間を引渡しから2年と定めたとします。

この場合、引渡しから2年間は、構造耐力上主要な部分等だけでなく住宅全体について売主は瑕疵担保責任を負いますが、引渡しから3年目から10年目までは構造耐力上主要な部分等についてのみ売主は瑕疵担保責任を負うことになります。

8.売主の倒産等

品確法は、買主の瑕疵担保責任を強化したという点では、非常に意味のあるものでしたが、瑕疵担保責任を負うべき売主が倒産などをした場合は、品確法によって救済されることはありません。

たとえば、売主が法人で破産して存在しなくなった場合は、買主にいくら強い権利を与えたとしても、権利行使の相手方がいないわけですから、どうしようもありません。

そこで、登場したのが「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」というものです。

これは、売主が破産等で存在しなくなった場合でも、あるいは売主が瑕疵修補の請求などに応じてくれなかった場合でも、売主にあらかじめ金銭等を供託させたり、保険に入ってもらうという方法により、買主はその供託金又は保険金により瑕疵修補をすることができるという制度を設けています。 →「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」の解説を参照して下さい。