不動産登記法16条(当事者の申請又は嘱託による登記)
【解説】
1.表示の登記と権利の登記
表示登記と権利の登記で、一つの登記記録を構成するわけですが、それにもかかわらず、両者の間には性質的にかなり異なるところがあります。
まず、表示登記について、建物などを新築した場合は、1ヶ月以内に、表題登記を申請しなければいけません。つまり、表示の登記については、申請義務が課せられています。
これは、建物が滅失した場合も同様で、「建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。」ということになります。この滅失の登記も当然表示の登記になります。
同様に、表題部には土地の地目や地積も記載されますが、「地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から1月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請」しなければいけません。ちなみに、この地目変更の登記は、土地が共有のときは、共有者の一人が申請すればよいことになっています。
このように、土地とか建物は、表示の登記を調べていけば、どこにどういう不動産があるのかが分かります。それに基づいて固定資産税なども課せられます。
これに対して、権利の登記は、不動産の二重譲渡のところで勉強しましたように、登記をしなければ、後から不動産を譲り受けた二重譲受人に対抗することができません。
つまり、権利の登記は、それをしなければ自分が損をするだけなので、特に法律で義務付けるようなことはしていません。権利の登記には、当事者に申請義務はないということです。
2.対抗力
表示の登記というのは、あくまで物件を特定するための物理的状況のみを表示するものですから、対抗力はありません。
それに対して、権利の登記は、第三者に自分の権利を主張(対抗)するためにするものですから、当然対抗力があります。
ただ、表示の登記でも例外的に対抗力が認められる場合があります。
一つ目の「借地権の対抗力」ですが、借地借家法で借地権は「借地上の登記ある建物」があれば、借地権について対抗力が生じましたが、その建物登記は、表示登記でも対抗力があります。
2つ目は、「規約共用部分の登記」です。たとえば、101号室を集会室のような規約共用部分にした場合は、登記をしないと規約共用部分であることを第三者に対抗できませんでしたが、この規約共用部分の登記は「表題部」にします。つまり、表示登記なのに対抗力が生じるわけです。
最後に「敷地権の表示の登記」です。