不動産登記法4条(権利の順位)
【解説】
1.登記された権利の順位
登記された権利の順位というのは、物権変動の二重譲渡で分かりますように、原則として「同一の不動産について登記した権利の順位は、登記の前後による。」ということになります。
それでは、この登記の「前後」の決め方というのを登記記録ではどういうふうに見るのでしょうか。
登記記録は、前に説明しましたように甲区と乙区があります。そこで、単純に先に書いてある方が優先するというわけにはいきません。
上図を見て下さい。登記記録の見本ですが、理解しやすいように簡略化してあります。今、Aが建物を建てて、その建物を担保にして、Bに1番抵当権、Cに2番抵当権、Dに3番抵当権を設定した後、Aはその不動産を抵当権を付けたまま、Eに売却したとします。そのときの登記記録が上図です。
まず、表題部に「所有者A」という記載がありますが、Aが甲区に所有権保存登記をしているので、表題部の「所有者A」という記載は、下線を引いて抹消してあります。登記簿がコンピューターに代わって見にくくなったんですが、以前の紙の登記簿のときは抹消というのは、文字の上に赤で取消線が引いてあり、抹消されたということが分かりやすかったんですが、コンピューターの登記記録に代わってからは、下線が抹消を意味することになりました。
そして、登記の順序ですが、同区(甲区と甲区、乙区と乙区)は順位番号でその前後を判断します。
別区(甲区と乙区)は受付番号でその前後を判断します。上図では、丸で囲ってあるところです。
この同区は順位番号、別区は受付番号で登記の前後を判断するという点を覚えておいて下さい。
甲区と乙区を比較する場合、甲区と乙区の順位番号は、それぞれ詰めて記載されますので、順位番号だけでは不十分だということです。この登記簿の例でも、Dの抵当権設定登記の順位番号は「3」で、Eの所有権移転登記の順位番号は「2」ですが、Dの抵当権と、Eの所有権では、Dの抵当権が優先します。受付年月日を見てもらえれば分かりますよね。つまり、EはD(もちろんBもCも)の抵当権付きの不動産を取得したにすぎません。